⑤ロシア(プーチン政権)の台頭

 まず最初に確認しておかなければいけないことは、ロシアは言わずと知れたアメリカに次ぐ世界第2位の核大国である。この事実は、冷戦崩壊後の国際社会におけるロシアの存在感の低下に相関するように忘れられがちである。現在、このロシアを率いているのがプーチン大統領である。ロシアに存在する核兵器の行方は、このプーチンに握られているのである。しかし、日本人の中でプーチン大統領のことを詳しく知っている人は少ないのではないかと思う。

先述のようにロシアは、冷戦崩壊後、ペレストロイカ、開放改革、1990年代の政商全盛時代を経て、現在のプーチン時代に至る。冷戦後のロシアでは、改革開放時代を通じ少数の政商たち台頭している。彼らは文字通り血で血を洗うような利権獲得競争を行い、一時期においてロシアに君臨したのである。象徴的な話しとして、たった数人の政商にロシアの富の50%が集中していると言う噂さえまことしやかに囁かれていた。彼らの多くは、石油事業をはじめとする国有化されていたビジネスのインフラを安値で買い叩いて、急激に伸し上がって来た。その過程は決して民主的なものではなかったと言われている。ただ、やり方はどうあれ彼らはある意味において非常に利口であり、優秀な数少ない勝ち組たちであった。

ここで私が主張したいのは、プーチン大統領はこれらの豪傑な政商たちを制して、今の国家運営を行なっているのである。石油事業の再国営化や、一部の政商たちへの弾圧的行為も有名な話である。これだけしたたかな大統領が率いる国家が今のロシアである。現実として、現在ロシアは石油事業の拡大によりその国力を蓄えつつある。もちろん上記のことから、ロシアがすぐに極東において軍事的影響力を行使してくるとは思わない。しかし、今後、ロシアが順調にを国力を伸ばしていった時に、隣には、同じく国力を急激に拡大している中国があり、その2国間の関係がアジアにおいて大きな影響を与える可能性は十分にあるのである。日本は、それらの事態を想定し戦略の策定と行動を進めていかなければいけない。

このように考えた場合に、日米同盟は今後とも最重要である事が見えてくると同時に、日本国家の独自の外交と戦略と言うものを明確に持っていることが必須となる。政治課題全体の中でロシアとの友好関係を結ぶと言う視点が、あまり前面に出てこない現状を見て危惧を感じるとともに、今後、日本政府としてのロシアとの協力関係、信頼関係の確立に全力を尽くすことを期待したい。

その際には、先述のように北方領土問題解決が必須であると言う姿勢を改め、包括的にロシアとの協力関係を結んで行く事が絶対的に必要ではないかと思われる。