大企業に勤める有名大学卒の社会人への問題提起

<はじめに>
 本稿をまとめようと思い立ったのは、筆者自身が学生時代から現在に至るまで継続的に「疑問」に感じていた事を一度で良いから、どうしても世に問うてみたかったためである。その疑問を世に提起することが、今の日本にとって非常な重要な事ではないかと言う気負いがあるのも事実である。また筆者が日本で暮らす一般的なサラリーマンであり、日本社会を支える多くのサラリーマンたちが「おっ、同じサラリーマンがこんな事を考えているのか。」と思い、ひとつの刺激になってくれればこれ以上の幸せはないと思う次第である。

まず、簡単に自己紹介すると、現在、筆者は某製造業にて経営企画に携わる仕事をする傍ら、社会人大学院生として国際経済・国際金融を専攻する31歳の男性である。こう書くと一見、真面目で優秀な人間と思われるかもしれないが現実は全く違う。筆者は、2年浪人をしてやっとのことで夜間大学に入り、卒業するにもさらに6年かかったと言う人間であり、決して優秀な人間ではない。学生時代の前半は野球ばかりやっていたと言うごく普通の大学生であった。本稿は、このような人間が感じた、「大企業に勤める有名大学卒の社会人あなたがたへの率直な問題提起」として書かれている。

筆者は、大学時代や現在の会社に勤めるにあたり多くの優秀な人たちに出会って非常に気になっていた事がある。それは、私よりはるかに優秀な人たちがあまり国家というものや政治というものに興味が無いのではないか?と言う事であり、日本や国際社会が抱える様々な問題にあまりに無関心なのではないか?と言う事でもある。我々、大なり小なり企業に勤める社会人は、日々の仕事に追われ、朝から晩まで、人によっては家に帰ってからも目の前の仕事のことばかり考えている。このこと自体をいけない事であると言うつもりは毛頭ない。しかし、その事により世の中で起こる他の出来事を真剣に考える余裕がなくなっているのも事実ではないかと思うのである。人によっては学生時代には日本の将来を真剣に考え、色々と勉強や議論などされた人も多くいると思う。それが社会人になってからは出来なくなっている事をもどかしく感じている人も多いのではないかと思っている。

例えば2001年9月11日の米国同時多発自爆テロ事件について、具体的に言うと旅客機連続ハイジャックによるWTC国防総省ペンタゴンへの突入と言う衝撃の事件について、今、皆さんはどのように考えているだろうか?9.11はおそらくほぼ全ての日本人にとってもこれまでにない衝撃であり、大きなショックを受けたと思われる。その事件の瞬間は、テロの卑劣さを強烈に憎んだ人もいれば、事件の意味を理解できずに困惑した人もいただろう。また、宗教対立の帰結と理解した人もいれば、経済格差の問題と感じた人もいたと思う。そして、世界がこのテロによって劇的に変わってしまったと言う気持ちになり、日本もテロの対象となる可能性を直感的に危惧した人もいるだろう。事実、日本人の犠牲者も24人存在しており、また、いろいろな意味で非可避的に日本に関係のある事件であった。
しかし、現在、日々めまぐるしく変わるビジネスの現場で活躍する日本のサラリーマンのあなたがたにとって、9.11と言う出来事はどれだけ重要な意味を持つと考えているだろうか?多くの方の反応としては、事の重大さは分かっているが、今の自分の日常や仕事には直接的には関係が無いし、出来る事も無いと言った感じではないでしょうか?もしも、このような意見の方が大勢を占めているのであれば、それは戦後経済最優先主義を掲げ、軍事や国際政治に関心や労力を払わなかった日本全体の問題なのでは無いでしょうか?繰り返しになりますが、やはり私が強く思うのは、有名大学を卒業し大学で国際関係や経済学、または政治学を専攻して、現在は大企業にて活躍中の優秀なサラリーマンの皆様が自分の仕事やビジネスに力を発揮するだけでなく、9.11を始め多くの国際問題や国内の政治経済の問題を自分の問題と捉えて、自分の頭で考え意見表明し積極的な行動に移すと言う事が重要だと確信するのである。もしその事が実現すれば、日本の世論全体のレベルを引き上げ、日本の政治が劇的に変わるのではないかと感じているのが率直な意見なのである。

確かに、高度成長を支えた我々の親の世代やその上の世代の方々は敗戦というショックから立ち上がるために精一杯働き、企業の拡大や日本の復興のためにがむしゃらであったと思う。その歴史が今の日本を支えているのは紛れも無い事実であり、尊い事であると思っており敬意の念を表すばかりである。今後も日本社会は資源がない不利な国土の現実の中で国際的に経済的に存続していかなければいけない。しかし、戦後日本の経済最優先主義のあり方が全ての点で正しかった訳ではない。そこが本稿の目的である「大企業に勤める有名大学卒の社会人への問題提起」なのである。

 本稿の構成は、各項目ごとに筆者の一般的な社会人の視点から感じる現在の日本社会が抱える問題や論点に意見を述べている。筆者は、経済に関してはある程度の見識があるが、その他の分野については基本的に素人である。大学時代に、政治、憲法社会保障論など各分野を専門で学ばれた方からするといささか心もとない議論かもしれない。本稿を読まれたサラリーマンの方々が「それは違う。私ならこう考えるぞ。」などと言う活気盛んな気持ちが沸き起こったとすれば、その時点で本稿の作成意義は達成された事となる。私が本稿を通じて達成したかった事は、まさにそれである。日本に存在する知的で日本の未来を議論する能力を秘めたサラリーマンの方々に、それぞれの専門性を持つ立場から今後の日本を良くするための知恵を提供して頂き、国政に反映させていく事なのである。

本文中にご意見や反論がございましたら、何とぞ遠慮なく論理的、または精神論的なものも含め様々な反論を突き付けて頂きたいと思う次第であります。その議論の中には、筆者では発想しえない素晴らしい政策が盛りだくさん含まれているものと思われ、想像しただけで非常にわくわくした気分になります。サラリーマン大学院生の経験と知識を振り絞って書きましたので、なにとぞご一読とご反論をお待ちしております。