MBO(2/3) 

(1つ目の続き)
 
  このような場合には、MBO(≒上場廃止)という策は望ましいわけではないですが、1つの手段として考えられます。投資会社が間に入る事により資金調達が可能になり、新たな戦略的な投資が可能になります。また、四半期ごとの短期での結果を重視する必要が少なくなり、上場時よりも長期での戦略立案も可能になります。

  しかし、MBOを行なうにあたり発行済み株式を買い取る場合に、巨額の借入金を行なうケースもあります。今回のケースでは借入金を多く行なったケースでした。借入金を多くすると言う事によりレバレッジ効果が高まり収益性が向上するのですが、企業側としては負債の増加である事には違いありません。これは、苦境から一転して、良い結果を引き出すための劇薬的な効果があると言えます。ただ、結果的に中・長期的な戦略に基づき収益の向上が実現できた場合には、企業側も投資ファンド側もハッピーとなります。

  つまり、MBOを行なうかどうかは将来への明確な成長ビジョンと計画があるかどうかにかかっていると言えます。つまり、MBOに伴い借り入れた資金を確実に返済していける明確な計画が必要と言う事です。明確なビジョンと計画無しにMBOを実施する事は、悪い状況をさらに悪い方向へと導く可能性があります。この辺りの判断を楽観論に基づかずに行なえるかどうかが鍵なのだと思います。

  また、業績好調で内部留保も多くあり、買収回避のためにMBOを行い上場廃止に至ると言うケースもあります。


  2つ目の株価が割安か、割高か?と言う問題があります。これは企業価値を算出して、一株あたりとして適正な株価が形成されているかどうかと言う事が問題になります。企業価値の算出法としては様々ありますが、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法が一番オーソドックスです。これは、簡単に言うと将来の期待収益をFCFに直して割引率で割り引いて現在価値に直すというものです。ただ、この場合にFCF以外にもEBIT、EBIAT、EBIATDAと言った指標でも、考え方によれば代替出来る可能性はあります。

  他には、株価倍率法式や、もっと単純に一株あたり純資産から見るという事もひとつの考え方です。もちろん株価が割安であれば、MBOを実施するタイミングとしては悪くないと言えると思います。株価が収益力や保有資産に対して安いと、買収対象になることは考えられますし、MBOで株式を買い入れる時のコストも低く押さえられる可能性があります。もちろん買取価格はTOB時点での買取価格によりますが、そもそも市場での株価が割安な事はMBOを行なう環境としては悪くないと考えられます。

  逆に割高だった場合には、買収価格が高くつき、借り入れ負債の増加を招きます。そもそも借入金を増やす事はレバレッジの向上により、利益の出ている企業の場合は収益性は良くなる可能性がありますが、収益の良くない会社の借入金増加は、言うまでも無く倒産リスクの増大に直結します。なので、株高時はMBOのタイミングとしては難しい部分があります。また、株価が高いときは、買収リスクも低くなっており(今回のケースは違いますが)買収防衛目的としてのMBOのタイミングとしては必要性は低くなっていると考えられます。