<Ⅱ.外交(外務省・防衛庁)>

注)9/15の日記が目次になっていますので、ご参考下さい。


① 日米同盟


 ・小泉首相ブッシュ大統領の強固な友情関係に裏打ちされた日米同盟は、安倍政権以降においても本当に強固なのであろうか?Ⅰ−②−4でも触れたように、日米同盟には決定的な問題が存在する。日本は主に自国と極東の安定を望んでいるのに対して、アメリカは政治・軍事的に世界全体に対してプレゼンスを発揮したいとし、さらに世界的なテロに対する対応を目的としている。このアメリカの覇権的要素を含む行動に世界はどのような反応を示しているのだろうか?一つの例としては、先日、キューバの首都ハバナで開催された非同盟諸国会議での出来事は象徴的であった。非同盟諸国会議は発展途上国の集まりであるが、その中にはアメリカに対して不信感を抱き友好関係が良好で無い国の幾つかを含んでいる。そして、そこでの最終決議と共にイランの平和的核利用に対する擁護の声明を採択して閉幕している。これは、明らかにイランの核開発中止を求めるアメリカの主張に対して、発展途上国を中心とする約115カ国・機構の代表らが反対の意を示した象徴的な出来事だったと思われる。ここで再確認したいのは、この出来事はあまり日本には関係ないのだろうか?と言う事である。例えば日本は対イランではアザデガン油田の契約権を獲得しているが、その事による日本のエネルギー安全保障の問題と、アメリカの中東における覇権(これも結局は、宗教対立と油の問題だが。。)と言う目的の間には温度差がある。つまり、当たり前のことだが日米間に国益のズレは確実に存在するのである。さらに、国連議会でベネズエラのチャべス大統領が、ブッシュ大統領の事を8回「悪魔」と断じた事が問題となっている。米国ライス長官によると、この発言は重要視していないとコメントしているが、この出来事は日本にとって何を意味するのであろうか?このベネズエラの石油は、これまでは主にアメリカに輸出されていたが、先日の発表では中国に対する供給を増加させていく事を明確にしている。現在のアメリカと中国の微妙な関係に対して、この発展途上国のリーダー的存在になりつつあるベネズエラのチャべス大統領が割り込むように影響力を発揮しつつある。この事は日本と中国の関係に影響を及ぼさないのであろうか?しかし、この出来事以外にも最も重要な問題があると思われるのは、この日米間の国益の違いが極東で有事があった際の対応に大きなズレを生むとも思われることである。この違いは日本にとって致命的になるし、日本自身が自国の利益と、米国の利益にどんな違いやズレがあるのかを、認識しておく事は非常に重要である。どこまでも、同じ目的のために一緒に歩めるわけでは無いと認識する必要があると思う。ただ、しかし、その大きなズレを明確に認識した上で、なお日米同盟が現状において有効なのは論を待たない。ここで主張したいのは日米同盟のあり方について今後さらに戦略的な思考を進め、必要な部分において日本側から働きかけを強めて、変更を実現させていく必要があるという事である。今回の米国の軍事再編はそういった自発的戦略を米国に示す絶好の機会であったとする識者や関係者もいたと聞くが、現実問題として日本側からの戦略的提案はほとんど無かったようである。時期的には2004〜2005年頃に、アメリカ側から軍事再編に対する日本側の対応方法の提案を求めたが、その頃は小泉郵政改革に政府・議会は集中し対応が遅れたと聞く。結果として、アメリカ主導、さらには米軍と自衛隊幹部の決定事項を追認するかのような対応になったと言うのは先述の通りである。つまり、戦後61年を経て、日本と言う国家は国際軍事・政治に関する戦略と言うものをほとんど描けていないと言うことが露呈したのである。その事を覆い隠すために、日米同盟を連呼しているかのようにも見えるのが不安要素である。在日米軍のグアムなどへの移転に加え更なる移転を自ら提案し、その空白を日本独自の自衛軍隊により補うことなどが必要と思われる。また、自民党総裁就任が決まった安倍さんの言う日本版の安全保障委員会構想(NSC)があるが、これは非常に評価できる考えであると思う。日本の諜報活動の弱さと言うのは戦争当事から指摘されていたが、これに一定の歯止めをかける動きが明確にあると言うのは正常な感性を持っていると感じる。さらに米国と連携して推し進めると言う事なので、アメリカの技術を学べるだけ学んで早く独り立ちできるようにすべきである。間違っても、米国に日本の持機密情報を流すだけの機関になってはいけない。筆者の主張は、日米同盟は最重視しつつも完全ではない事と、両国間の相違性を明確に自覚し、日本独自の防衛体制を確立する意志と気概が必要ではないかと言う事である。その事は、日本人に誇りと独立心を芽生えさせる事に繋がり、ひいてはアジアの国々からのさらなる信頼を得る事に繋がるのではないかと思う。