<Ⅱ.外交(外務省・防衛庁)>

注)9/15の日記が目次になっていますので、ご参考下さい。


⑤ 対ロシア指針


 ・BRICs(ゴールドマンサックスの造語)の一国にも含まれるロシアは、米ソ冷戦時代、ペレストロイカ、開放改革、1990年代の政商全盛時代を経て、現在(2006年)はプーチン政権の全盛期となっている。プーチン政権になってからは石油ビジネスの国有化などを推し進め、経済的国力の強化を実現している。また、ロシアは言うまでもなくアメリカに次ぐ核兵器大国である事は間違いない。冷戦におけるイデオロギー対決には一定の決着が着いているが、冷戦期間に拡大した大量破壊兵器の蓄積の廃棄は劇的には進んでいない。また、国土の大きさに関してもダントツのれっきとした世界における数少ない大国のひとつである。ロシアは、冷戦後の現在においても世界の動向を左右する可能性のある大国のひとつであることを明確に認識する必要がある。地理的には、日本の北方に位置し非常に日本に関係深い国である。しかも、今後は日本の中東依存のエネルギー戦略の見直しの観点からも非常に実利的にも重要な国となっている。また、ロシアという国は日本にとって重要なだけではなく、ヨーロッパ、中国などにとっても隣接する重要な国ではある。特に中国は、膨大化する自国経済のエネルギーの供給源としてロシアを重視しており、ロシアとしても石油の需要先としてお互いとって利益があり協力関係を結んだほうが良いとして、急接近している。ヨーロッパにとってもロシアという国とは根本的な文化の違いや、プーチン政権のやや独裁的な政治手法などからも、なかなかEU圏として取り込むこと出来ない。EUから見て外部として扱わざるを得ないことから、その対応には大きな配慮と労力が必要であるというのが現状だろう。そういった意味でも、ロシアは国際的安定と発展において鍵を握る国なのである。特にここ数年のロシアは、もともとあった潜在能力を着実に伸ばし、国際政治の表舞台へと着々と戻り影響力を拡大しつつあると言えるだろう。しかし、そのロシアに対して日本はその関係改善があまり進んでいるとは言えない。1945年の日ソ中立条約の一方的な破棄や、冷戦時代からの名残もあるだろうが未来を見据えて、ロシアとの協力関係の構築を急ぐべきではないかと思う。ただ、ここでも米国依存の外交がロシアとの友好関係の確立に障害となっている事は間違いないだろう。今後日本が、独立した国際的にも認められる国となるには、明確な戦略に基づきロシアとの関わりももっと深めて行く必要があると思われる。もちろんロシアとの間には、北方領土問題があり、この問題に対する対応方針を明確にしておくことも大事であろう。もしかしたら、政治的、経済的な協力関係を高めるためには、あえて北方領土問題は棚上げする事が良いのかもしれない。その間に、他の案件を通じてロシアに対する影響力を構築する必要があると思われる。例えば、ソ連から分離後、まだ経済的な発展や政治的安定を実現していない中央アジアに対する積極的協力などが考えられる。先日、日本の首相として小泉首相が始めて公式に中央アジアを訪問したが、この訪問をひとつのきっかけとして日本独自に中央アジア各国と更なる信頼関係構築を進めて行くべきだと思う。そして、経済復興への技術的、資金的協力や、また政治的安定のため尽力するなどにより、中央アジアの国々への影響力を高めた上でロシアと信頼関係を構築することが重要ではないかと思う。現在のロシアは大国ではあるが、政治的安心感を周囲の国々に与えているわけではなく、逆に不安定要素であるのは事実だろう。そういったロシアに対する不安感を感じる周辺諸国に対して日本が積極的に関与することにより、地域でのプレゼンスを高めることは有効な戦略であると思われる。この戦略はあくまでも、ロシアとその周辺諸国の安定のために推し進めるというのが第一目標であって、ロシアに対して外枠から影響力を高めて対ロシア外交において有利なカードを手に入れるという意味合いは副次的効果でしかないことを明確にしておく必要があると思われる。筆者が最も強調したいのは、現在のロシアの経済的な発展が継続していけば、経済以外の分野でのロシアの影響力は再び拡大していくだろうと言う予測であり、今のうちに日ロ関係の改善を進めておくことは非常に重要である。