<Ⅱ.外交(外務省・防衛庁)>

注)9/15の日記が目次になっていますので、ご参考下さい。


⑦ 対南米、中南米指針(ブラジル、ベネズエラ等)


 ・南米最大の大国ブラジルにおけるサトウキビからのエタノール開発や、チャべス大統領のベネズエラにおける油田国有化など、今、中南米におけるエネルギー産業の行方が注視されている。特に、チャべス大統領は中国との石油ビジネスでの関係を強めており、今後、さらに中国に流れるべネズエラの原油は増える見込みである。また、ブラジルはエタノール開発の技術を世界に向け発信し、エタノール市場のパイ自体の拡大戦略を推し進めている。そのひとつとして、インドとの協力関係を強力に推し進めており注目されている。南米は90年代の債務危機を乗り越え、今、新たな段階へと突入している。これまで、南米諸国はアメリカの南に位置する政治的にも経済的にもそれほど大きな国々、地域ではないと思われてきた。現在においても、まだその規模が桁違いに拡大していると言う訳ではないが、方向性が変化しつつあるのは確かなようだ。加えて、さらに大きな意味合いを持つのは、南米諸国のアメリカ離れが進んでいるという事である。上記のブラジル、ベネズエラに加え反米政権の誕生したボリビアなど、南米全体的に反米の空気が広がりつつある。NAFTAでのアメリカの孤立はその象徴であったし、先述の非同盟諸国会議や国連総会での出来事は、アメリカの裏庭と言われる南米において反米的な動きが活発化している事の証左であった。これは米国との同盟関係に依存する現在の日本にとっても、非常に重要で大きな流れである。ここでもアメリカ一辺倒の外交を展開する日本の脆弱さが露呈している。アメリカと協力関係を深めるほど、南米の反米政権との距離は遠くなるのである。この事実を日本外交戦略として、致し方ないと片付けてしまうのは怠慢であろう。日本独自ルートにて、安全保障の観点からの南米諸国との信頼関係の確立、エネルギー戦略を基本とした南米諸国とのFTAなど経済関係の確立など日本が取り組むべき課題は多い。また、これら独自ルートの確立は、アメリカに対する影響力を高めることにも繋がる可能性がある一方、アメリカからの誤解を招く可能性もあるので説明を明確に行いながら推し進める必要があると思われる。いずれにしてもここ数年における中南米の活発な動きには、日本としても今の段階から注視する必要がある。ベネズエラと中国、ブラジルとインドがそれぞれのエネルギー戦略の観点から急速に友好関係を進めている事は既に述べたが、この流れには今後の国際的な協力関係の枠組みを揺さぶる大きな可能性が秘められている。以下の考えはあくまでも一つの可能性でしかないが、これからの急激な発展が期待される中国とインドが中南米を拠点としたエネルギー戦略の流れと相まって、急速に協力関係を結ぶ可能性は充分にありえる。その場合には、日本は地理的に中、印、南米と言う三角形の内部に内包される事となる。この可能性は、けっしてありえない話しではない。中南米諸国の台頭が秘める可能性は、中南米地域の活性化だけに留まらない。国際社会全体のあり方にも多大な影響を与える可能性がある。日本はその事を明確に認識して、外交努力を進めて行くべきだと思う。また、中南米諸国との信頼関係を築き、経済や政治的協力関係を進めることにより南米諸国が本当は何を考えているのかを知る事が非常に重要である。その情報は、アメリカとの協力関係を基本とした国際社会の平和と安定を維持、推進していくために非常重要な情報源となりうる。安倍政権が日本版NSC構想を進めて行く際には、このような独自ルートでの情報収集能力の向上が必須課題であるとの認識だと思われるし、今後の経過を期待しながら見て行きたいと思う。