<Ⅱ.外交(外務省・防衛庁)>

注)9/15の日記が目次になっていますので、ご参考下さい。


⑧ 対中東、中央アジア指針(エネルギー戦略等)


 ・周知の通り日本の原油輸入依存度は、中東に集中している。中東での戦略を考える際には原油確保という視点は欠かす事が出来ない。既に日本はこの中東依存の原油供給体制に危機感を感じており、ロシアのサハリン沖やイランのアザデガンなどからの原油調達に力を入れている。しかし、ロシアでは中国側の介入により当初予定されていた調達ルートが実現されないなどの現実もあり、さらにイランの油田開発に関してはアメリカへの配慮などからも順調には進んでいない。こういう現実を考えた際に、既存の中東地域での原油確保は絶対命題に近いものがある。

では、日本はこの中東地域に対して何をすべきなのであろうか。例えば、イラク戦争後の対応において自衛隊派遣は国内的には一定の評価はされるべきものであるが、対外的に考えた場合に中東における日本のプレゼンスを高めることになったのであろうか。確かに、危険な地域に出向いて水の供給や、学校建設など様々な協力は行ったし意義はある。

しかし、現地のイラク人が求めていたのは、自分たちに仕事を与えてくれる日本企業の駐在であった。確かに当時の(今も)イラクにて民間人がビジネスを行うことは危険極まりない。また、仮にビジネスを展開したいという意思を持つ民間企業があっても、現在の日本の自衛隊がその民間企業の安全を確保出来る状態には全く無い。この現象は、どのように考えるべきであろうか。まず、日本の民間企業の進出を望む現地のイラク人の存在がある。もちろんイラクでのビジネスは海千山千で一筋縄ではいかないが、一定のビジネスチャンスがある事は間違いない。しかも、イラクでのビジネスを志向する経済主体も日本側にも多数存在すると思われる。にも関わらず日本が独自に経済進出する事が出来ないでいる。問題は非常に明快で、かなりの確率で身の安全が保証されないからである。

しかし、もしも日本の経済主体がイラク進出する際に、日本の自衛隊に強力な自衛力があり安全の提供が可能だったと仮定すると、日本の経済協力の可能性も飛躍的向上し、日本へのイラク国民の評価は確実に高まる。また、国の立ち上げ時期に積極的に経済協力を行ったと言う認識もイラク国民には残るだろう。中東における将来的な政治力の礎となる可能性は十分にある。また、純粋に国と国の信頼関係も強固に結ぶことが可能となりえる。

もちろん上記の内容は一例に過ぎないし、イラクに限らず中東には民族対立や宗教対立などが根強く存在しており、バランスの取れた事業展開が出来ない場合は一部の民族などから恨みすら持たれる事になる可能性も十分にある。しかし、日本のおかれたエネルギー確保の状況は、そもそも磐石でもなければ余裕がある状態でもない。何らかのリスクをとってでも積極的に行動をすることが必要であると思われる。中東における日本のプレゼンスの拡大のためには、自衛力拡大はひとつの戦略となりえると思われる。もちろんエネルギー戦略の観点からは、水素エネルギーや、エタノール開発など他の方法も考えられるので、それらの進行具合との兼ね合いも重要ではあるが、エネルギー戦略以外の観点からも、中東における日本の発言権を確保するための努力は、今後はこれまで以上に強い意志を持って推し進めていくべきだと思われる。