<Ⅲ.経済(経済産業省・金融庁・経済団体)>

注)9/15の日記が目次になっていますので、ご参考下さい。


④ 製造業の今後の役割


 ・製造業は戦前、戦後から高度成長期を経てバブル崩壊の頃までは、明らかに日本の経済社会のけん引役であったのは事実である。もちろん、今後も製造業が重要な産業であることは間違いないが、国際競争の激化に伴いさらなる企業の生産拠点の海外進出により雇用の創出と言う社会的役割が以前ほどは果たせなくなってきているのは事実であろう。とは言え、今後、国際市場として中国、インド、東欧などが市場として成長してくれば、まだまだ製造業にとっての活躍の場は存在している。日本における雇用の創出機能は低下するかもしれないが、日本には開発拠点、国際的事業統括の拠点としての位置づけは継続する。ただし、この問題は前回の内容と密接に絡んでいる。つまり、国際課税の観点から、①移転価格税制の問題、②国際的2重課税の問題、③過小資本税制の問題など、政府の今後の対応次第では、開発拠点や統括機能でさえも海外流出が起こる可能性すらないとは言えない状況である。優秀な人的資本を惹きつけるだけの魅力ある企業は、海外において優秀な日本人を現地採用と言う形で低賃金(通貨格差による絶対値比較であり、購買力ベースでは著しく低いと言う事ではない)で採用しているため、開発拠点や事業統括拠点の海外流出の可能性は単なる空論では無い。対応に窮するのは、超一流企業ではなく、一流と二流の間くらいの企業が難しい対応を迫られると言う気がする。

 また、製造業は今まで以上に知的技術を蓄えて行く事が重要な課題となる。ロイヤリティ収入などの確保による国内での利益確保は企業側としても政府としても非常に重要であり、税務当局と企業側が対立するのではなくお互いに情報を出し合って、国際的課税を行う上で日本国全体として損失を出さないようにすることが重要である。こういったノウハウの蓄積が、今後新たに育成されて行くべき産業IT、バイオ、ナノ関連の事業展開をスムーズにさせる効果を持つのではないかと思う。まとめると、製造業の今後の役割は、日本産業のフロントンランナーとして様々な国際的現象に真っ先に対峙し解決して行く事により、今後成長する日本の新規産業がより大きく羽ばたける環境とノウハウを整備することにあると思われる。もちろん、それら製造業自身が今後とも世界的に拡大を続ける市場と共に繁栄を続ける事は重要である。筆者も、製造業勤務ですので。