<Ⅲ.経済(経済産業省・金融庁・経済団体)>

注)9/15の日記が目次になっていますので、ご参考下さい。


⑤新規産業の活性化の国家戦略(IT、バイオ、ナノテク等)(2/2)


バイオ、ナノテクなど新規産業の育成は、国家的事業として重用である事は10年以上も前から認識され、政府としても予算を付けて育成に取り組んでいる。なので、政府としてこれら新産業の育成に全く力を入れていないと言った批判をするつもりはない。しかし、これまでの取り組みの中から産業全体にインパクトを与えるようなレベルの成功は達成していないのは事実である。

 この事の理由は幾つかあると考えられるが、業界筋から直接情報を聞くとある程度納得の行く答えが返ってくる。例えば、バイオ産業は国家としても重点的に育成に取り組んでいる産業であって、その分の予算も割り振られている。しかし、国家、役所側の予算割り振りをする側が最先端の知識やノウハウに必ずしも長けている訳でなく、経済学的に言うと情報の非対称性問題に基づき、非効率な資金配分が行われているのである。極端な話し、遺伝子と言ったキーワードがあると予算がつくといった具合である。これら現象は経済学的に言うと、非常に良く見られる問題なのである。この情報の非対称性が発生している環境においては、逆選択モラルハザードと言った問題に繫がっていく。

 それではなすべき事は何かと言うと、この情報の非対称を解消するための仕組みづくりが必須となると言う事になる。しかし、言うは易しであり現実問題としては非常に難しい課題である。そもそも技術レベルの確認から、国際間の比較や競争力の問題、さらにそもそも現実社会でビジネスとして展開するための技術なのかどうかなど、ある意味誰も答えを持っていないのである。その現実の中で、資金配分の効率性を高めるという事が求められている。しかし、だからと言って諦める訳にはいかない。考えられる対応は積極的に取るべきである。

例えば、該当分野の役人の配置を多くして、あらゆる角度から各企業のビジネスや技術の将来性、有効性を精査する体制を築く。また、国家予算の直接配分により役人に利権が発生するため、その資金配分が公平に行われているかを監視をする機関を設置するなどが考えられる。いずれにしても日本という国は、資源の少ない国であり、知恵を活用した産業をひとつでも多く確立させていく必要がある。そして、将来的に新しい産業による税収の増大が見込めるまでの先行投資は必要であり、それをいかに効率的に行うかが、今後の日本の行方を決める大きな論点となると思われる。