⑦ 通貨戦略(2/2)

では、日本の円は国際通貨として認知される必要は無いのであろうか?また、そもそも国際通貨として流通させたいという意志はないのだろうか?実は1980年代後半から90年代にかけて円の国際化について非常に関心が高まり議論された事がある。特にアジア通貨危機を受けて発表された、宮沢構想などはその流れを汲んだものである。当時日本は、アジア域内の経済の安定化のために、また日本の域内でのプレゼンスの向上のために尽力し、その流れの中で円のアジアにおける流通の拡大を目指した。

しかし、1990年代以降の日本経済はバブル崩壊以降に混迷を極めた。100兆に及ぶ経済対策も経済の再活性化というレベルまでは達成できなかった。また、銀行の不良債権の処理など様々な国内問題の対応に追われ、アジアのリーダーどころではなくなり円の国際化という戦略も衰退をたどった。事実、アジア域内における円による決済取引は低下している。ただ、そもそも通貨の国際化を達成するには、その通貨流通のために資金供給量の増加による域内流動性の向上を担保する必要がある。それは国際的に安定して流通し続けていれば良いが、その信用を失った瞬間急激な通貨下落、激しいインフレを招く可能性も秘めている。それらデメリットも踏まえたうえで、円の国際化を考える必要がある。

さらに、ドルとユーロという2大国際通貨の行方に対する冷静な予測と事前の対策が必要である。さらに付け加えると、今後、中国共産党による通貨政策として「元」 の流動性が高まる政策が実施されていった場合、円の立場はどうなっていくのかなども出来る限りの分析を行い、複数の通貨政策メニューを用意しておく事も重要でないかと思われる。